まちの本屋
ドキュメンタリー映画
ストーリー
兵庫県尼崎市。立花駅前から続く商店街にあるのは売り場十坪の小さな本屋、小林書店。小さな本屋を取り巻く環境は厳しく、この20年間で書店は半数近くまで減った。そんな中、店主の小林由美子さん、昌弘さん夫婦は様々なイベントを開催したり、地元客を大事にする商売で店を続けてきた。しかし、突然、昌弘さんを襲った脳梗塞。店を続けるべきか悩む由美子さんは改めて書店という商売と向き合う。その時、見えてきたものとは…
経済学であり、ラブストーリー。
ー出版社社員
小林書店
1952年、小林由美子さんの両親が尼崎市内で創業。幼少から商売の大変さを見てきた由美子さんは本屋はやらないと決めていたが、会社員で夫の昌弘さんの一言で店を継ぐことを決意する。
2020年12月、小林書店の実話から生まれた小説「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」(ポプラ社/川上徹也著)が発売された。
まちの本屋ができるまで
2015年、熱烈な小林書店ファンという出版社の社員に勧められ、由美子さんが登壇する講演会を聞きにいったのが小林書店との出会いだった。
小さな本屋のきびしい現状を紹介しつつ、話題の中心は「小さな店だからできることがある」。力強く、温かく、ユーモアにあふれた話に時間はあっという間に過ぎた。深く感動し直感的に映画を撮りたいと思ったが、性分から踏ん切りがつかなった。
そこで、まずはJR立花駅近くにある小林書店に行ってみることにした。時間帯が悪かったのか意外にも客は少なく賑わう店内を想像していたため少し戸惑った。由美子さんは「時間大丈夫?」と気遣ってくれた後、両親から店を継いだ経緯、阪神淡路大震災がきっかけで傘を売るようになった話などしてくれた。それも講演会と同じような熱量で。勧めてもらった本を購入し、大満足の時間を過ごした。
その後、数年にわたり通ううちに映画を作る決意をし、撮影協力をお願いする手紙を出した。撮影期間は2019年夏から年末まで。その時間はとても楽しく充実し、たくさんのことを考え、気付きがあった。その私にとっては宝物のような時間を疑似体験してもらえるような映画にすることが編集のテーマとなった。
私は由美子さんに本を勧められると思わず買いたくなる。その理由は本の内容を、近所で起きた出来事のように、まるで身近な世間話のように、話すことだと分析している。そのため映画の中でも由美子さんが本を紹介するシーンは長くした。皆さんはどう感じるだろうか。
ちなみに「由美子さんより本が好きな本屋さんはたくさん知ってるけど、由美子さんより人が好きな本屋さんは知らない」は、私がこの映画を作るきっかけをくれた出版社社員の言葉である。その人はもちろんのこと、小林書店、妻、撮影に協力して下さった全ての皆様に心から感謝しています。ありがとうございました。
監督 大小田直貴
大阪芸術大学映像学科卒業後、テレビのドキュメンタリー番組を演出。本作がドキュメンタリー映画の初監督作品。
上映劇場
2024/6/24 更新
上映イベント
2024/11/19 更新
Comment
#1 特別支援学校教員 三浦千尋さん
私が、子供の頃に小林さんと出会っていたらきっと本が好きになったんじゃないか…映画を観ていて、小林書店の近くに住んでいる方々がうらやましくなりました。本を通して、人と人がどんどん繋がっていく様子、チャキチャキの奥様を静かに優しく支える素敵なご主人とのユーモラスな掛け合い、本屋なのに傘を売っている理由とそこに至るストーリー…おもしろい!小さい町の本屋さんが業界を変えてる!すごい!何より小林さんが語る「小さい町の本屋さん」としてのプライドがまたカッコいい!この映画の中には、今こんな状況だからこそ思い出したい前向きな気持ちや、人との絆がたくさん散りばめられていました。この状況が落ち着いたら、絶対小林書店に行きたいと思います!
#2 講談社 販売局 吉田俊輔さん
街の人たちに愛され、街の人たちを優しく包み込む本屋さん。この街には無くてはならない小林書店が、こうして日本中に紹介されることは地元のお客さんはもとより、古くからご主人と奥様の人となりに接して来た私たち出版に携わる者にとっても大変嬉しく、また誇らしい気持ちになります。是非ご覧下さい、ほっこりしますよ。
#3 ポプラ社 一般書事業局
大塩大(まさる)さん
いっけん何のへんてつもないまちの本屋の日常だが、そこには、喜び・悲しみ・苦悩・楽しさなど、生きていくうえで誰もが直面するすべてが詰まっている。本と人間が好きな人にはぜひ観てほしい作品。
大塩大さん
映画の舞台、小林書店を題材にしたビジネス小説「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」の編集担当。
#4 共同通信社 編集委員室 藤原聡さん
小さな本屋の日々の営みを淡々と追ったドキュメンタリーが、心の奥深くに響くのはなぜだろう。大量生産、大量消費が常態となった現代社会。書店も例外ではない。大規模書店が、地域の「知の拠点」である町の本屋を次々とのみ込み、消していく。そんな中、人と人とのつながりを大切にする小林書店の姿は、荒れ野に咲く可憐な花のようにみえるのだ‥‥。ぜひ、多くの人に見てもらいたいと思っています。
#5 コピーライター 川上徹也さん
まちの本屋の日常を淡々と映しているだけなのに、波瀾万丈なストーリーがある映画のように、まったく飽きることなく食い入るように観てしまったのはなぜだろう? その秘密をさぐりに、大阪でもう一度観たいと思います。
川上徹也さん
映画の舞台、小林書店を題材にしたビジネス小説「仕事で大切なことはすべて尼崎の小さな本屋で学んだ」や最新作「文章の鬼100則」など著書多数。
#6 絵本・応援プロジェクト 事務局 池水秀徳さん
この映画は、小林由美子さんが主役の映画なんですが、登場される場面は少ないのに、ご主人の存在感がとても大きい。サラリーマンを辞めて、本屋の跡継ぎの妻のバックアップをライフワークにとした決意と、「実務」とはどうあるべきかと言う確固たる信念を、数少ない映像から感じます。アクティブで愛想があって、努力家で負けず嫌いの女店主の店を守ろうとする奮闘ビジネスドキュメントと、その人のパートナーとして、裏方に徹して寄り添うご主人が、淡々とお互いを大切に思いながら生きる静かなラブストーリーだと思います。